ハーブ畜水産物となる、牛、豚、鶏、魚が食べている 「飼料」のお話を致しましょう。
1. 人間がご飯を食べるように、家畜もご飯を食べています。飼料とは、家畜にとってのご飯です。
2. 牛は草食性です。昔は労働力として重宝されている時代もありました。草の豊富な地域では放牧されていますが、冬の気候が厳しい地方やあまり草が豊富でない地方では乾燥させた草を食べています。
豚・鶏は雑食性です。どちらも雑草を食べたり、土を掘り返して小さな生き物を食べたりします。昔は家の軒先で家族の一員(食用になったりもする)として飼われ、その場合はその家から出る残飯を食べていました。
魚は孵化してまもなくはプランクトンなどを食べますが、成長するにつれ、ほかの魚介類などを捕食します。
3. えさとは、飼育している動物に与えるものです。また、動物などを捕獲したいときに、誘い出すために与える食べ物も該当します。飼料は、経済動物として飼育する家畜や養殖魚に給与するものです。
4. これは家畜として飼っている人間の立場から考えた「よい飼料」です。
ハーブ畜水産物に給与しているハーブは、家畜の健康性を高めよい肉質を作ります。
<飼料の分類>
主に、粗飼料と濃厚飼料に分類できます。
主に牧草を加工するなどして作られたもので牛・やぎなどの反芻動物にとっては不可欠なものです。反芻動物は、胃の中に住んでいる微生物の力で消化を行っています。乾燥した牧草を乳酸発酵させたものを、発酵飼料といいます。 サイロなどに貯蔵して作りますが、発酵させることで長期間の保存を可能にします。
穀類、動物性原料、油の搾り粕、ビタミン、ミネラルなどを配合して作られます。 配合飼料は、複数の原料あるいは添加物を配合設計にしたがって一定の割合に混合したものです。養鶏、養豚用配合飼料の場合には、その多くが家畜、家禽の必要とする全ての栄養素を十分に供給できるように製造されています。 混合飼料は、一般的には配合飼料に対し、2~3種類の飼料を特定の目的で混合した飼料をいい、1種類のみは単味飼料といいます。
マッシュ・ペレット・バルキーなどがあります。それぞれ製造方法が異なっており、特徴があります。
原料を粉砕して混合したものです。栄養成分のバラツキが小さくなります。
マッシュを円柱状に成形し固形化したものです。マッシュに比べて嗜好性がよく、採食速度が速いという特徴があります。
かさばった飼料原料(ヘイキューブ、ビートパルプ、綿実など)を配合したものです。繊維含有量が高く、比重が軽いです。
5. 工場で作られた飼料は、農場や漁場まで運ばれます。紙袋(20kg入り)とトランスバック(500kg入り)という規格の袋入りのものはトラックで、バラという規格のものはバルク車に直接入れて運搬します。
今回は、前回お話した飼料(配合飼料)に入っている主な原料を簡単に説明しましょう。
メイズは、三大穀物の一つで私たちが普段食用としていますが、飼料用としても利用されています。畜産用配合飼料の約50%はこのメイズです。メイズという呼び方はイギリス英語で、アメリカ英語ではコーンといいます。
生産量は年間9億トン前後で、うちアメリカで4割程度を生産しています。日本は世界最大のとうもろこし輸入国で、1,600万トン/年を輸入しており、これは日本のお米の年間生産量の2倍に当たります。このうち1,100万トンが飼料の原料として使われています。
バイオマスエタノールに利用するため生産量が伸びていますが、同じ穀類である大豆や小麦と比較すると成長に大量の水を使うので、問題となっています。飼料作物を燃料用として使うと、穀物相場が高騰する原因にもなります。
マイロは、こうりゃんともいいメイズの代わりに使うことが出来ます。苦味があるためやや嗜好性は落ちますが、栄養価はメイズと同等です。良質の脂肪質を作ることから豚・ブロイラーなどで使用されます。
大麦は、味噌・醤油・麦茶・ビールの原料としてもなじみ深いものです。メイズに比べ繊維・たん白質が多くなります。飼料用としては主に肉牛に使われ、脂肪は白くしまりがよくなるので、豚でも良質の脂肪作りに使用されます。
大豆かすは、大豆から油を搾った後の副産物です。畜産用配合飼料のうち14%ほどがこの大豆かすで、メイズに次いで多く使われています。たん白質が多いため重要なたん白源となっています。
なたねかすは、なたねから油を搾った後の副産物です。大豆かすに次ぐたん白源として使われています。
ふすまは、小麦を製粉する際にできる副産物です。
コーングルテンフィードは、とうもろこしからコーンスターチを除いたあとの外皮から作られます。ふすまやグルテンフィードは、繊維が多く配合飼料に混ぜることによりバランスのよい飼料となります。
コーングルテンミールは、とうもろこしからコーンスターチを除いたあとの蛋白のみを分離したものです。したがって非常にたん白質が高いため、採卵鶏や魚の飼料に多く使われています。
脱脂粉乳はスキムミルクとも呼ばれ、牛乳から脂肪分を取り除き乾燥・粉末状にしたものです。昔は学校給食で出されていたこともあります。
乾燥ホエイは、牛乳からチーズを作る際にできた液体を乾燥したものです。脱脂粉乳・乾燥ホエイはいずれも子牛・子豚用飼料に利用されます。
魚粉は魚から油分を除いた残りを乾燥させたものです。現在は深層海流がわきあがる、チリ・ペルーが主な産地となっており、カタクチイワシ(アンチョビ)が多く使われています。かつては日本でもイワシを使って作られていましたが、最近ではイワシの不漁で生産量が少なくなりました。養魚用飼料や豚・鶏用に多く使われています。なお、牛には使用されません。中国や新興国の経済成長と産地の大地震・漁獲制限で魚粉相場は値上がり傾向です。
タンカルは、炭酸カルシウムの略称です。日本国内の鉱山から産出された石灰石を粉砕したもので、飼料以外にも道路舗装・工業・肥料用など幅広い用途に用いられています。鶏には粗め・牛豚には細めなど、家畜の生理・機能に応じて粒度を調整して使用します。
リンカルは、リン酸カルシウムの略称です。リン鉱石と呼ばれる鉱石を粉砕、焼成し、不純物を取り除いたものです。天然の食物にも含まれていますが含量が少ないため、ほとんどは上記のように製造され、その鉱石は主に中国・チュニジア・モロッコ・南アフリカ・アメリカに存在します。植物の肥料にも利用されます。
豚も人間と同じように成長過程に応じてライフステージが分けられます。お肉になるために生まれた子豚の一生は、大きく4つのステージに分けることができます。(食べる飼料も4回変わります)
生まれた子豚は、21日間は母豚と一緒に過ごし、母乳を飲んで育ちます。この期間を「哺乳期」といいます。特に母乳の最初の乳のことを初乳といい、この中に子豚のために大切な抗体が多く含まれており、生まれて約半日の間に飲ませることが重要です。最初の飼料は母乳と併用して与えます(餌付用飼料)。母豚を子豚から離すことを「離乳」といいます(授乳をやめること)。子豚は生まれたときは約1.5kgですが、離乳時には約6kgと4倍の体重になります。(人工乳前期飼料)
離乳した後、体重が10kg位になると飼料が切り替わり(人工乳後期飼料)、母豚と離れて、子豚たちだけで生活します。母乳をやめたり、母豚と離れたりと子豚にとってはストレスの高い時期であり、病気の発生しやすい時期です。消化する能力がまだ発達していないので、消化のよい高エネルギー・高たんぱくの飼料をあげます。この期間を「離乳子豚期」といいます。
体重が30kgくらいになったら、食べる飼料が変わります(子豚育成用飼料)。生まれて70日目くらいですが、子豚は飼料を食べる量が増えてどんどん大きくなります。おいしい肉になることを考え、赤身を十分に作ることを目的として、穀類を中心とした飼料をお腹いっぱい食べさせてあげます。これより体重が70kgになるまでの間を「子豚期」といいます。
70kgを目安に飼料を変えます(肉豚肥育用飼料)。この時期の飼料は全く抗菌性飼料添加物を含まない飼料となっています。この飼料は、良い肉質を作るための多くの原料を含んだ飼料です。おいしい肉になるための最終調整の期間(約60日間)で、この期間に食べたものが豚の肉質を決めてしまうと言ってもいいくらいです。体重が115kgを目安に出荷されます。この70~115kgの期間を「肉豚期」といい、生まれてから約180日目で出荷です。
ハーブ豚になるために育てられた豚は、最後のライフステージである肉豚期に、ハーブを加えた動物性原料を全く含まない純植物性飼料(ハーブ豚専用飼料)を食べて育ちます。ここで使用するハーブとは、飼料会社の研究所で長年研究されて開発されたハーブで、オレガノ・ジンジャー・シナモン・ナツメグの4種類を使用しています。ハーブ豚専用飼料は嗜好性が大変よく、豚の健康にも役立ち、よく食べてすくすく成長した豚がハーブ豚になります。ハーブ豚のお肉は、やわらかく、獣臭もなくあっさりとした味わいです。またドリップも出にくく、鮮度が長持ちします。